キミの手の奥の僕
遠くから、沙和が私を呼んでいる。
私は沙和に手を振って走って彼女の元に駆け寄った。
「さて、今日は何処に行く?」
今日は日曜日。
沙和と一緒に買い物の約束をしていた私は、隣で携帯をつついている沙和に遠慮がちにそう聞く。
少し歩いた所で近くにあった喫茶店を指さした沙和が言った。
「ひとまず、此処で休憩しようよ」
特に早く買いたいものが無かったから沙和に従ってそのお店に入る。
お店に入った瞬間コーヒーのいい匂いがした。
店舗内の内装がとても春めかしくてボーとその飾りを見ていたら、沙和が「あ」と声を上げて奥の机へと駆けて入った。
「え、ちょっと沙和?」
驚いた私は沙和の後を追いかけるとそこには茶髪の髪をワックスで整えた晴とクリームブラウンの髪を揺らす未玖が居た。
頭の中が真っ白の私に比べて、寧ろ最初から知っていたというような沙和。
放心状態になっていた私の腕を引っ張り椅子に座らせたのは未玖。