キミの手の奥の僕
No.1
自転車をこいで、桜の咲く並木道を急ぐ。
ピンク色の花びらが私の目の前をふわふわと舞う。
冬が去り春が訪たはずなのに、まだ少し肌寒く乾いた風が頬に当たる。
ピロロロロ…
携帯が音と共にポケットで振動する。
私は右手でハンドルバーを握り、左手で携帯の通話ボタンを押した。
耳に当てて声がするのを待つ。
すると、ガヤガヤとした雑音の中一人の声が聞こえた。
「香世~?今どこらへん?」
電話の相手は友達の沙和から。
「えっとねー、あの桜の並木道」
「はあ~?もうすぐ入学式始まっちゃうよ?」
私はその言葉に慌てて時計を確認した。
あと3分で入学式。