キミの手の奥の僕
「まぁ、遅れた理由はまともな理由だし…。いーか」
ガチャンッと自転車のストッパーを下ろす。
前に付いているかごから、学校指定のカバンを取り出してスタスタと校舎に向かって行った。
そんな所に現れた、男の子。
ぶわっと制服をなびかせて校門の塀を飛び越え着地した。
立ち上がるその男の子は私よりも少し背の低い、そして癖のあるクリームブラウンの髪をかき揚げて言った。
「あっちゃー、間に合わなかったっぽい」
がしがしと頭を掻き、乱れた制服のまま校舎の中へと入っていく。
私は呆然としながら、立ち尽くしていた。
あんな場面を見せられたら当然だ。
なんで開いている門から入らずに、塀を飛び越えて入ってくるのか…。
しかも、軽々と3メートル程もあるのに…。