キミの手の奥の僕
この気持ちを消さなくちゃいけない。
私はそうしなくちゃいけない。
頭のなかで言い聞かせても、消えてなんてくれない。
「…体調わるいの?大丈夫?」
心配してくれる沙和。
優しい沙和。
そんな沙和をこれ以上裏切るようなことなんてしたくない。
「うん…。風邪引いたのかも。」
また嘘を吐いた。
ごめん。沙和。
「無理しないでよ?気分悪くなったら言ってね!保健室いこ。」
眉を下げて、私の背中をさすってくれる。
胸が痛い。
「うん」
無理に笑顔を作った。
引きつってしまった笑顔に沙和はまだ心配そうな顔をしている。
耐えられない。
この罪悪感から逃れたかった。
「…私保健室に行ってくる」
一緒に行こうかと言ってくれた沙和に、大丈夫と言というと早足で教室を出た。
早足がだんだんと走りに変わる。
人気のない階段まで行くとその隅に隠れて泣いた。
ひどくキリキリと痛む。
痛い、痛い、痛いよ。
なんでなんだろう。