キミの手の奥の僕
耳を貸せってことね。
そう思って近づくと未玖はこそっと私に耳打ちした。
「佳世、晴のことすき?」
その言葉に私は言葉を失った。
いや、頭は真っ白になった。
未玖、いま…。
「…そうでしょ?」
そうゆうとにこっと笑う。
え、え。
どうしよう。
固まったままの私に不思議そうに首を傾げる未玖。
はっとして、ふるふると首を横に振った。
「…違うよ。」
小さな声で否定した。
だけど、
「沙和が晴を好きだから?」
今度はそういって私の瞳を未玖の瞳が捉えた。
…ぜんぶわかっちゃってるの?
でも未玖、もうそれ以上言わないで。
声に出したらまた、溢れちゃうよ。
「そうじゃない。違う。」
未玖の瞳から逃げたくて、顔を背けると走った。