キミの手の奥の僕



悩んだけど、何を言ったらいいのか分からなくて、そのまま返事を返さなかった。




次の日になって、自分の席いる私の机に手が置かれた。




「今いい?」



少し怒が混じった声に、びくっと肩を揺らして頷く。




教室から出て人気の余りない階段まで来ると、今までずっと前を向いていた晴が振り返った。



「俺、なんかした?」


昨日のメールと同じ言葉。


私は下を向いたまま首を大きく横に振った。


「じゃあなんで、避けんの?」



「…」


晴が好きだから。

晴を忘れたかったから。


だけど、どれも自分勝手な感情だからきっと呆れる。


…言えないよ。



「何かしたなら謝りたい。佳世とは…友達で居たいんだよ。」




背の高い晴がしゃがんで切なそうに声を枯らして呟いた。



友達でいたい。


彼の気持ち。


それは、私の心に深く突き刺さった。






< 61 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop