キミの手の奥の僕
悩んだけど、何を言ったらいいのか分からなくて、そのまま返事を返さなかった。
次の日になって、自分の席いる私の机に手が置かれた。
「今いい?」
少し怒が混じった声に、びくっと肩を揺らして頷く。
教室から出て人気の余りない階段まで来ると、今までずっと前を向いていた晴が振り返った。
「俺、なんかした?」
昨日のメールと同じ言葉。
私は下を向いたまま首を大きく横に振った。
「じゃあなんで、避けんの?」
「…」
晴が好きだから。
晴を忘れたかったから。
だけど、どれも自分勝手な感情だからきっと呆れる。
…言えないよ。
「何かしたなら謝りたい。佳世とは…友達で居たいんだよ。」
背の高い晴がしゃがんで切なそうに声を枯らして呟いた。
友達でいたい。
彼の気持ち。
それは、私の心に深く突き刺さった。