ウラコイ2 銀幕の旦那様
タクシーには南座近くでおろしてもらった
「いるかなぁ…」
「中にいるらしいよ。ちょっと説教したって言ったから…お、来た来た」
入口から市村さんと一条さんが出てきた
「悪いな…市村」
「今日は通し稽古しかなかったから別になんてことねぇよ」
出ていきにくそうに一条さんは
市村さんの後ろにいる
「じゃ俺戻るわ……何があったか面倒くさいから詮索はしねぇけど、そのお嬢様はちゃんと持って帰れよ。…じゃあな」
「あぁ…ありがとう」
ヒラヒラ手をふって市村さんは
南座に戻って行った
「一条さん…」
「…なによ、迎えになんかきて…」
「みんな、心配してる。戻って…」
一条さんは 早足で四条大橋の方に歩いて行った
「ちょっと…、」
「……分かんないわよ。…あたしは、あたしだって沢山考えたの…うまくやろうて。仕事も…貴女の事もなのに…」
うまくいかない事があってたくさん考えて…
彼女は16、7才で女優をしている…
しかも学生だ……
悩みはつきないはずだ
「一条さん」
「…みんな捜してる。俺もキツい事言ったから、逃げたいのはわかるけど。逃げてもなにもならない…」