ウラコイ2 銀幕の旦那様
さっき倒れてたわりに
翔太君の意識ははっきりしていた
「翔太君は優しいね。」
「なにそれ、優しくないよ。普通だよ…、」
皮肉っぽく笑うけど
それがわざとしているとわかった
「…弥生さんを見てきてるから、あたしまでそういう風にさせたくないって考えてくれてる。」
「……」
憎むのではなく
どうしたらいいのか分からないのだ
彼はきっと…
血を分けた親だから。
「ありがとう。…未来を考えてくれて、」
「…みちるさんは人が良すぎる…、馬鹿みたいに優しい。」
うつむいて言う声は力がなかった
わたしは翔太君を抱きしめた
「……」
「親父の事嫌いだ…けど俺達の事愛してくれていた…。優しかった…おぼろげだけどちゃんと覚えてる……、だから…」
憎みたいけど憎めない
いっそ憎んだら楽なのに
わずかでも
繋がっていた絆が邪魔をする
だから こんな曖昧な
感情で悩まなければならない
「もっと親父が酷い人間だったら良かった。そしたら有名俳優だろうが遠慮なく憎めるのに……。」
「うん…」