ウラコイ2 銀幕の旦那様
撮影も終わったのに
神田弟はぼうっとしている
喫煙所のあたりは真っ暗で
意識しなければ
人がいるとは思えない
「神田弟!」
「町谷さん…」
あたしは ふっと笑った
「みちるもう帰ってくるらしいからスタジオにいなさいよ、どうせ帰る気ゼロでしょう?」
「ゼロって…」
神田弟は苦笑した。
「…ホテルよりもこっちで見た方がいいわよ。きっと」
「見る…?」
神田弟は聞き返した。
訳が分からない風だった
「神田怜一の映ったDVDよ。ホテルより雰囲気あるでしょ」
「親父の…?」
神田弟の目が今日やっと
あたしの目を見た気がする
「みちるがそれをとりにあっちに戻ったのよ。3年前ケビンさんにもらった…あんたが何かあった時用にって…」
「……」
ははと神田弟は笑った。
「…親父、そんなもの残してやがったのか…」
「あー、いたいた!」
みちるが 息をきらして走ってきた
「おつかれ、遅かったわね。」
「ごめんごめん。ちょっと人と話してたら遅くなって…」
みちるは 笑いながら言った
「ま、無事帰ってきたからいいわよ。じゃああたし先に帰るから…」