ウラコイ2 銀幕の旦那様
あたしがぐずって南座まで来た
市村さんからしかられ あたしはとぼとぼ後ろを歩いていた
道ゆく人彼を見る
青の着物に
気持ちのよい音のする下駄
茶色い髪…
「そういえばあんたの靴…、」
「あたしは…」
「たしか…靴屋が近くにあった。くるまで時間があるから靴でも買いにいくか。」
「は…?でもさっきは貸してやるって…」
市村さんは不満そうな顔をしていた
「ダサいスリッパでいいなら貸すけど。あんた一応女の子だし、買って、かす。あんたはそれを履いて帰ればいい」
「帰ればいいって…」
あたしは訳がわからなかった
こんな暑いなか
飛び出して興奮してたのか
頭がよく働かなかった…
だから一緒にノコノコ
靴屋まで行ってしまった…
「いらっしゃいませ、あら…坊ちゃん。まぁまぁ綺麗なお嬢さんも…」
「こんにちは。中村さん、」
中村さんと呼ばれた人は
女の人で店主さんみたいな人だった
あたしは妙に緊張していた
普通の靴屋ではなく
のれんがかかってる靴屋…
ぜったいに高い…店だ
坊ちゃんと呼ばれて
きっと昔からの常連だ…
「なんかこの子にあうの出してくれませんか?」
「はいはい。畏まりました、」
ふつうの靴屋
みたいに靴の展示はなかった…