ウラコイ2 銀幕の旦那様
「…“俺はそんなに強くない、フリして周りを、騙してる。そうしなきゃ俺が耐えられないからだ。生意気で怖いもの知らずで、有名俳優の神田怜一。死んだあとまで周りを騙し続けてやるよ”病床で怜一はそう言っていた。」
強くはない
強いフリをしている…死ぬまで
私はそんなに強くない
みちるさんも確か言っていた
「親父がそんなことを…」
「その時ようやく理解したよ。天才だなんだといわれていたが普通の男なんだと…。君や妻の事を心配していた…」
「…そうですか。」
「…いない人間をどうこう言っても仕方ないがね。駄目だな、しんみりしてしまうね。」
親父は俺や母さん、兄貴を
心配していたのは知っている
DVDに映っていた
親父はたしかに父の姿だった
いない人間…か
だとしたら彼の妻も…
「すいません…失礼を承知で聞きます。勘十郎さん、あなたの奥様は…」
勘十郎さんはふと箸をもつ手をとめた
奥から流れている
音楽が陽気で場にあわない…
「もういないよ。勘太郎を生んで三年で亡くなった。…身体があまり強くなかったんだ、私が殺したようなものだ。しかし…なぜ勘太郎から聞いたのか?」