ウラコイ2 銀幕の旦那様
必死だった
だから歌舞伎だって真面目に取り組んだ
叱られても怒鳴られても稽古に明け暮れた
あるとき公演が
終わり親父を探していた
古株の役者と話していた
『息子が怖い?』
『勘太郎は…。あいつ瞳の事何も聞かないんだ。いつか話さなきゃならんのは分かってる……、でも話したらあいつは私を軽蔑する。あいつのあの目は苦手なんだ。瞳の目に似て、まるで瞳に責められてるみたいな気がして……』
「市村くん…休憩終わるよ」
「あ、すいません」
スタッフに声をかけられ腕時計をみた
もう休憩が終わる
「…馬鹿らしい」
吸いかけのタバコを灰皿に押し付け消した
「市村」
「あぁ神田。もう撮影始まるぞ…」
あわただしいスタジオで
妙に神田は落ち着いていた
「昨日は悪かったな。親父さんが時間つくってくれたのに…」
「いやいい、いい。親父もあんま気にしてなかったし…。お前は親父に気にいられてるから大丈夫だよ」
神田はそうかと笑った
「お前のおかげでアレコレ聞けたから良かったしさ」
「あのさ……お前に文句つけるわけじゃないんだけどさ……」
遠慮がちに神田は話を切り出した