ウラコイ2 銀幕の旦那様
親父はそう言うとさっさと席を立った
スタジオの外まで見送りに行くと
付き人の緒方さんは待っていたように親父の傍に走ってきた
「時間ギリギリですよ。勘十郎さん、」
「すまない。ちょいと長話になっちまったんだよ。」
緒方さんはおれに気づいて頭を下げた
時間ギリギリなのに余裕ぶっていた親父
わざわざ時間を割いてきたのか…
「じゃあな。体に気をつけろよ、」
「分かってる…。親父」
親父の後ろには車がきている
「……」
「なんだ?」
おれはすべてに納得はできない
今までの生き方があるから
簡単になにかを受け入れられない
「…おれは、」
人を本気で好きになれることができるのか?
「恋愛なんてな、しないほうがましだ。一人で十分生きていける。けどな、人間そんな強いわけじゃない。だから本当は一人でなんて生きていけないんだ…」
親父はふっと笑った。
「市村さん。」
スタジオに戻ると町谷さんが歩いてきた
「あぁ…、」
「…一条さん目を覚ましたわよ。あぁ…気にしないでただの独り言だから」