ウラコイ2 銀幕の旦那様
「なんでもない」
お父さんは また笑った
聞きたい言葉をのみ込む
なぜ
口に出してしまったら戻れないと思った
なにか変わるかもしれない毎日より
変わらなく続く毎日の方がいい
なにより
お父さんがつらい
顔をするのが嫌だと思った
12月
雪はほとんど毎日降ってきた
わたしは冬休みを楽しみにしていた
お父さんはドラマの撮影も
佳境になり大分落ち着いてきた…
もう冬休みだ…
「お父さん、今年もスキーは周君達と行くの?」
「あぁ。弥生さんが張り切って休みとったらしいからな、あの子達も中々遊びに連れて行って貰えないだろうし…」
弥生さん。
その頃の彼女の印象は優しい人だった
わたしに優しくしてくれた
母のいないわたしと
父のいない彼達…
大切なものを失ったのに
それなのに
ちゃんとそれに見合うものを
わたしと彼達はもらっていた
まるでそうなるのが当然だったみたいに
「お父さん。もう弥生さんと一緒になっちゃえばいいのに…したら周君達だって」
「……そうだなぁ」