ウラコイ2 銀幕の旦那様
知らないでいることが
しあわせなことだとも知らないで
涙を拭う
言ってしまった
ずっと心にためていたこの人への最大の不満を
怒ってるはずだ
とんでもなく不機嫌な顔をして……
「…やっと言ってくれたな。みちるさんの本当の気持ち」
「……な、」
「わからないよ。みちるさんの気持ちなんて、親父を亡くしたのもガキの頃だし…。けど自分だけ不幸を棚にあげるのはやめて欲しいね。……あなただって何回おれの前からいなくなろうとしたんだ?」
「っ……あれは事故で。それに、井野さんがわざと…」
確かに事故だ。と皮肉っぽく笑った
「知らないだろ?その時の俺の気持ち。事故った時も閉じ込められた時も、プールに落ちた時も、必死に冷静になろうと必死だった。たかだかスタッフの一人が死にそうになった時の俳優のあるべき姿を必死で頭に浮かべてた。」
「そうでもしないと…人前であなたを自分の彼女だと堂々と言って助けたくなる衝動が…押さえられなかったから…。わかる?あなたになにかあるだけで、そういう衝動にかられて心配する」
翔太君は まっすぐ前をみていた
「……似てるんじゃないかと思うんだよ。俺は、みちるさんが親父さんを思う気持ちと俺がみちるさんを思う気持ち…。適当に早く慰めたいから言ってるわけじゃないよ。」