ロバの少女~咎人の島


トッコは島には珍しい森の中に住んでいるらしい

森の手前で
ミキは気づいた

監視たちは手を出せないんじゃない

森ごと監視しているんだ

森には出口が一箇所だけ
それ以外は塀で囲まれている

まるで、牢


ここに来たことは見られているな
ミキは、覚悟を決めて森に入った

森は明るく元気だった
それは誰かが手入れをしているということ


初めて見るミキにはただ新しくしかなかったが
ミキの住む長屋から緑の塊は
この森だった


「森。これが森・・・」
森に入るとすぐに罠が作動した

紐に鳴り子を付けてある
森中で鳴り子が騒がしく鳴り
鳥たちの羽音がまた騒がしく響いた


ミキはとっさに陰に隠れる

陰の中に生きたきたミキの習性だろう
隠れることに離れている


木漏れ日の中に山羊の面が現れた

「隠れても無駄だよ」
ぶっきらぼうに言った声は、年老いて聞こえた

「・・記録のミキです」

今度は陰から、驢馬の面が現れる

「記録が何の用だ?」

聞いて、トッコはもうひとつ付け足した


「新しい驢馬か?」

ミキはうなずく

「レンに、あなたに会いに行けと・・」
「鯨とりの鼠か?」
「レンを知ってるんですか?」
「・・ついて来い。」

レンガトッコを訪ねたのは、島を去る前日だった

「女の子を助けてほしいんです」
「助ける?随分、お門違いな内容だねぇ?」
「名前はミキ。記録です」
「ミキは、女の子なんて年じゃないだろう?」
「新しいミキです。」
「そうか、猿は世に戻ったか。」
「ミキは島に父親を捜しにきたんです」
「父親・・まさか」
「名前はふ・・」
「その名を言うな!」
「え?」
「今のうちに身辺整理を済ませておけ。時期、
お前を監視が迎えに来る。」
「どういう?」
「私に会いに来いと伝えてほしい。お前はすぐ
世に戻されるだろう。」
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