ロバの少女~咎人の島


この日
世は変わった

島の住民は知る由もなく、平凡を
この日も繰り返していた

生まれたことすら、赦してもらえなかったこの娘に・・


猫はミキを見つめながら、胸の痛みを殺した
でも、いま自分には何も出来なかった


偽りの中で
偽りに守られているこの娘に
真実はきっと刃となるだろう

たくさん向けられた切っ先を
彼女が受け入れたら

猫はミキから目を離した
陰の中で息を殺した

そうでもしないとミキの涙をもらってしまいそうだった

監視の役を
演じられなくなりそうだった



世では
この日

世と島を治めてきた人が亡くなった
それは
島の咎人たちには知らされなかった

監視たちとトッコは知っていた
それによってなにが変わるか


知っていた

覚悟を決めるときだった


「ヨーク」
「ぅあっ?はい?」

後ろからぬっと現れたのは豚の面の男

「あの、なんでしょう?」
「トッコ様がお呼びだ。記憶を戻すそうだ。」
「え?はい?」
「おまえの名は、レンだった。」
「レン?」
「聞きたくなったか?なら、来い。」

ヨークは、うれしそうな顔をして自分を見てきたミキの顔を思い出した。
あれ依頼一度も会っていないのに、忘れないロバの面。

「オレがレン?」

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