ロバの少女~咎人の島
守りたいもの
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「よく来たな。」

ヨークと豚の面を、トッコは自分で部屋の中に招きいれた
豚の面は、トッコの後ろの猫の面に目を向けると居なくなった


「あの…オレは」
「大人たちの勝手ばかりを許してほしい」

トッコはそう前置きをして、ヨークに向かい合った

「ひとつ、聞く」
「はい…」

「ロバを守りたいか?」
「なにがあるんですか?」
「勘がいいのは変わらずか」

トッコは一人つぶやいた後、首から下げた笛を鳴らした

ヨークは目を覚ますと、長屋にいた
頭が痛い
昨日のことがよく思い出せない

枕元にある面を見てハッとした

キジ?

キジだったか?

「きっかけをやった」
「う…頭が……」
「記憶を戻せばおまえは消える…」

そのあとに何か、大事なことを言われた
でも

ぼやけた記憶はそこでとぎれている

「桟橋に行け」
「え?」

女の声がした


ヨークはすぐに面をとると
身支度を整え
朝霧に霞む桟橋に走った

この道はよく覚えている

よく、覚えて…
また頭が痛んだ

急がないと


桟橋には人影があった
霧でぼんやりしか見えない
でも、ヨークにはわかった

「ミキ」
「えっ、レン?」
「いまは、ヨーク。霧のおかげで少しはなせると思う。」

ヨークは自分の体を柱に隠して影を消すと、そのまま続けた

「ミキ、オレはレンだって」
「え?」
「でも、オレはヨークで。レンの記憶がない…いや。多分、今度はオレが消える。」
「消える?」

振り返ったミキがヨークを探している

「そのまま、動かないで居て」
「ヨーク?」
「そう、オレはヨーク。女にここにいけって言われた。きっと、ミキにこっそり会わせてくれてるんだと思う。」
「猫…」
「ミキ、会えて良かった」



「ヨーク?」

ヨークの居た柱にはもう誰もいなかった
霧の中から一度、猫の面が現れたがすぐに消えた
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