ロバの少女~咎人の島
富祇


直感で父だと思った
人と関わりを持たなかったミキは
島の人の名をほとんど知らない


「探してほしい人がいるの」
ミキはレンに切り出した

「人探しをしてたんだ?」
「……それだけじゃなかったから」

人に頼ることも初めてのミキにとって
躊躇があるのはきっと当たり前なのだろう

ミキの沈黙も
レンはじっといつも待ってくれる
頭の中でたくさん考え
整理して悩み言葉を探して話すまでの間

その沈黙は
レンがそばにいることが
待っていてくれることは
ミキには不思議と落ち着く瞬間だった

「フギという男の人を捜してほしい」

「フギ?」
「しらないな…ごめん。でも、ぼくも手伝えるなんて嬉しいよ」
「嬉しい?……どうして」

ミキは動揺していた
それは仮面を伝ってレンにもわかった


レンはこの日
ミキに抱いていた感情に気づいた


でも
それは
島では叶わぬこと

「その人を捜せばいいんだね」
「うん」

動揺を隠すように
ミキは声を低くした
「なにかわかったらここに来るよ」
「うん」

レンはもっとここにいたかったが
うつむいてしまったミキを気遣って話を切り上げた

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