Happy birthday
 


 美琴の墓は、全面紫色のチューリップに覆われて、なにがなんだかわからない状態になっていた。

 実は造花だったりする。

 なんか時期がずれてんのか、その辺の花屋見てもチューリップは売ってなかったし。

 だから、100円ショップに行けるだけ行って、紫色のチューリップの造花をかき集めてきた。

 どこの店の店員も、俺を異常者を見るような時の目つきで見てきやがった。

 ま、こんなんも俺らしくていいよな?

 そういえば、ついでに本屋に寄って、美琴が好きだった花言葉をちょっとだけ、勉強してきたんだ。

 とりあえず、ひとつ新しく覚えた花言葉がある。

 あのとき、屋上で美琴が俺の鼻の穴に差した赤いチューリップの花言葉だ。
 
 赤いチューリップの花言葉は『愛の告白』って意味なんだってな。

 じゃあ、あのときから、美琴は俺の事を……
 
 おっと、言い忘れていた事がある。

 これを言わなきゃ、なんのためにここに来たのかわからなくなっちまう。

 来年も、この言葉を言うために、またここに来よう。

 その時は、自家栽培でもして紫色のチューリップをたくさん持っていくから。

 だから、待っていてくれよな。

 誕生日、おめでとう。


「Happy Birthday 」



 
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