Happy birthday

「ああ、なにを買っていいかわかんねーからさ。とにかく、適当にいっぱい買ってきた。美琴、花好きだしな」

 だから、それになんの意味がある?

 俺はどうしたら、いいんだ?

「……浩介」

「……どうした?」

 美琴が、どこかを見ていた。
 
「……指、……血が出てるよ」

 買ってきた花束のトゲかなんかが刺さったのか、右手の人差し指から血が出ていた。

「……だいじょうぶ?……マヌケだね」

 そうだな。俺はどうしようもないマヌケだ。


「……ねえ。……お願いがあるの……」

「なんだ?なんだって言うことを聞いてやる」 

 ……だから、どうか死なないでくれ。

「……お誕生日に、……うたう歌、……うたってほしいの」

 誕生日にうたう歌?

 ああ、あれか。

 ガキのころダチの誕生日会で、よく周りのみんなが歌ってたやつか。

 俺はかったるいから、歌った試しがなかったけどな。

「……美琴にうたうのが初めてだぜ、心して聞け」

「……嬉しい。……ありがとう」



 happy birthday to you♪

 俺は思い出していた。

 バカバカしくて、くだらない毎日を。

 美琴とのかけがえのない思い出を。

 happy birthday to you♪

 あの屋上で、赤いチューリップを俺の鼻に差したときの美琴の笑顔。

 プールで溺れた美琴を助けた時の事。

 初めてキスをした雨の日の事。
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