愛してるさえ、下手だった
けれどその直感の真偽はすぐに明らかになった。
小さなビジネスホテルの前で足を止め、中に入る。
「ここに泊るの?もうちょっと豪華な所に泊るのかと思ってた」
俺が何も言わないでいると彼女はいい加減にあきらめたのか、無言で俺の後をついてきた。
「ほら」
素早く手続きを済ませ、彼女に部屋のカギを手渡す。
「旭、は…?」
「俺は隣の部屋」
それを聞いた瞬間、彼女の顔から一気に血の気が失せた。
さっきまでの図々しさや能天気な笑顔はどこにもなかった。
俺のものと比べてずっと小さな肩が震える。
彼女は掠れて聞き取りにくい声で何とか呟いた。
「嫌だ…」
聴こえた言葉はそれだけだった。
それしか言わなかったのかもしれないし、他にも何か言ったのかもしれない。
けれどどちらにしろそれは、とても悲痛な響きをもって俺の耳に届いた。