愛してるさえ、下手だった
小さく舌打ちしながら、自分の部屋に彼女を入れる。
その瞬間、彼女があからさまに安堵の息をついたのが聞こえた。
「ありがとう」
そんなこと、何年ぶりに言われただろうか。
あんまり久しぶりだったものだから、それに対する反応のしかたも忘れてしまった。
俺はたくさんのものを捨てすぎたのかもしれない。
「あのね。あたし、ひとりぼっちが怖いの」
「ガキじゃねぇんだから」
彼女の体が小さく縮こまる。
もともと小柄だったけれど、もう小動物みたいだ。
たとえるならそう、猫に似ている。
自由奔放なところが、特に。
「だからね、旭が来てくれてうれしかったぁ」
「はぁ?」
来てくれてうれしかっただなんて初めて言われた。
つくづく彼女は一般とかけ離れている。
「だって旭は、あたしをひとりにしないでくれたもの」