愛してるさえ、下手だった
「…知るかよ、そんなの」
言いながら部屋の冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターのペットボトルを取り出す。
――似ている。
言いかけた言葉も、水と共に胃の中へ流しこんだ。
「じゃあ今まではどうしてたんだよ。ずっと親と一緒か?」
想像しても気持ち悪い。
俺は親なんて別に好きじゃなかったから。
ただあの光があればよかったから。
「ううん、違うよ。彼氏と一緒だった」
彼氏というと、さっき言っていた奴だろうか。
彼女の顔に暗い影が宿る。
「…振られちゃったけどね」
唇を微かに震わせながら、か細い声で口にした。
まるでそれを認めたくないかのように。