愛してるさえ、下手だった
あたしはほとんど家に帰らずに、ずっと彼の側にいた。
彼があたしのすべてだった。
あたしが彼のすべてだと思っていた。
あんな風に言われるまでは。
「また怒られたんだ。何してんだバカって言われた。
そんなこと、ないよな?」
「そんなことないよ、大丈夫」
「…本当か?本当にそう思ってるのか?」
「本当だよ?」
あたしの頬のすぐ横を、ガラスのコップが飛んで行った。
背後でコップが壁にぶつかって割れる音が響いた。
何が起こったのか、誰がそうしたのかわからなかった。