愛してるさえ、下手だった
目の前で互いに微笑み合う両親。
だけどあたしには目もくれなかった。
いつもあたしは家族の輪の中には入れなかった。
家族じゃなかった。
「恋人」と「子供」。
あたしは付属品だった。
あってもなくても変わらない物。
あったらいいけど、なくても特に困らない。
なんて軽い存在。
そんな環境の中で、笑顔は必須だった。
笑っていないと置いていかれる、嫌われる。
ただでさえ輪の中に入れないのに、そのうえ雰囲気を台無しにするなんてことはしたくなかった。
聞きわけがよければ、この調和は乱れないから。
だからあたしは笑っていないといけなかった。
どんなにつらくても、哀しくても。
だからね、バカにしたわけじゃないんだよ。
しかたなかったの。