愛してるさえ、下手だった


俺は激しく首を左右に振る。


「俺は、優しくない」

お前が思うような優しさなんて持ち合わせていない。

それは今までの俺の行いを見れば明らかだ。


自分の命を守るために多くの命をつぶしてきた。
誰が殺されようと殺されまいと関係ない。
自分が無事ならそれでいいと、すべてのものを切り捨ててきた。

一番大切にしている思い出だって、いつかはその感情の中に沈んで埋もれてしまうのかもしれない。


「優しくない…」

世界が揺らぐ。
俺が今まで生きてきた世界が、これが正しいと自分に言い聞かせてきた世界が壊れていく。


もうこれ以上俺を惑わせるな。

「やめてくれ…!」

両耳を押さえてうずくまると、彼女は俺の隣に腰かけた。

何を考えているのかわからない目が、哀しみに潤んでいた。


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