愛してるさえ、下手だった
振り返ると、暗い景色の中に浮かぶ明るい髪の色が目に入る。
朝日によく似た色だった。
ぼんやりとその髪を眺めていると、その人はこっちに近づいてきた。
髪よりは少し濃い茶色の瞳、細く均整のとれた体。
世間一般から見たらきっと、格好いいんだろうなとは思った。
だけどあたしはこの人について何も知らない。
もちろん会ったこともない。
どうしてあたしの名前を知っているんだろう。
「あなたはだぁれ?」
あたしのその質問に、彼はためらうことなく答えた。
「俺は殺し屋。お前はこれから俺に殺されるんだ」
巡り巡る、この世界の運命が。
そのたった一言で打ち壊された気がした。
普通なら泣きだしたくなるぐらい怖いだろう。
なのにあたしは、うれしかった。
あたしの世界を終わらせてくれる誰かが現れたこと。
やっと救われた、と心が呟いた。