愛してるさえ、下手だった


こんなの、あまりにもひどすぎる。

「あさ、ひ…?」

寝ぼけた声で、満希が俺の名前を呼ぶ。
俺の体勢とこれからするだろう行為に気付いた彼女は、薄く微笑んだ。

またあの、切なくなるような笑顔で。

「いいよ、殺しても」

「……っ」

唇をかみしめる。
口の中に血の味が広がる。

痛い。

だけどこれよりももっと苦しい痛みを、俺はたくさんの人に与えてきた。
残酷で、惨たらしいやり方で。

「それで旭が楽になるなら、いいんだよ…」

そんなの、楽になれるわけがない。
もっと苦しくなるだけだ。
もっと哀しくなるだけだ。

「あ…、あ゛あぁ……!!」


醜い叫び声が、俺の口からこぼれる。
もっと強かったはずなのに、満希が俺の強さを奪っていく。

コンクリートで必死に塗り固めていた俺の弱さを露わにする。


もう、やめてくれ。


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