愛してるさえ、下手だった
俺はゆっくりと満希から距離をとる。
でないと殺してしまいそうだった。
殺してしまえばいいのに。
そうしたら俺は依頼も遂行できて、自分を締め付けるものもなくなって、いいこと尽くしだ。
どうしてそれができない。
自分の無力さに吐き気がする。
「やっぱり…」
寝転がっていた満希がだらしなく頬を緩める。
「やっぱり、旭は優しいねぇ」
何が優しいのかさっぱりわからない。
俺はお前を殺そうとしたんだぞ?
怖がられることはあっても優しいと言われる筋合いはない。
世の中にこれほどおかしな体験をする殺し屋はどのぐらいいるのだろう。
「俺は、お前を殺そうとした」
「うん、知ってる」
「お前の首を絞めようとした」
「うん、でもまだ絞めてない」
「俺は…」
そこから先は何を言ったのか覚えていない。
言っていても言っていなくても、涙交じりの情けない声だっただろう。