愛してるさえ、下手だった


「なんでよぅ」

頬をふくらませて旭を睨むと、彼も負けじとあたしを睨み返してきた。

「絶対来んなよ」

「どーしてさ」

ふてくされながらベッドに座って足をぶらぶらさせていたあたしは、次に投げられた言葉に動きを止めた。


「殺しに行くんだよ、人をな」

だから来るな。
聞こえないぐらいの小さな声で乱暴に言い捨てて、旭は部屋を出ていった。

「殺し屋」という現実味のなかった単語が、急にはっきりと頭の中に焼きつく。

旭が人を殺すわけがないと思ってた。
最初に自分は殺し屋だと名乗っていたけれど、心のどこかでは誰も殺していないんじゃないかって思ってた。


そうであってほしいと、願っていた。

「殺し屋、かぁ…」

そんなわけが、なかったのにね。


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