愛してるさえ、下手だった


刹那が浅くため息をつく。
それは夜十が落ちこぼれなことを嘆いているわけではなく、もうあきらめているようだった。

「あいつはきっともうすぐ、ここから出ていくだろう」

「ここって…、殺し屋を辞めるってことか?」

「恐らくな」

そう言ったかと思えば、今度は話の矛先が俺に向けられる。
氷柱に全身を貫かれるような恐怖があった。

「だからその分までお前に仕事を回すことにする。次の依頼はこれだ」

渡された紙には、冴えない顔をした男の写真。
何も映していないような空虚な目が恐ろしく、印象に残った。

満希を殺すのはこんなにためらっているのに、どうしてだろう。
別の依頼を任された今、その依頼をストレス発散のように感じている。


満希を殺せない分の気持ちを、こちらにぶつけてしまおうとも考えている。

けれどそれは叶わなかった。

「その依頼はなかなかに面白いぞ」

「は?何がだよ」

刹那が冷たく微笑む。


「お前が殺そうとしている相田満希、だったか。そいつと以前交際関係にあったらしい」

いつもは余計な情報を一切流さない刹那が口にした情報。
それは俺を追いつめるのには十分だった。


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