愛してるさえ、下手だった


けれども彼女は、強すぎた。

「…そっかぁ」

泣くことも怒ることもせず、笑うこともなく。
無表情な瞳で、半ばあきらめたように呟いた。

怖いほどに冷静だった。


その上俺は、見てしまった。

彼を殺した時にポケットの中から出てきた携帯電話。
拾い上げて、一番最近の送信メールを見た。

中には、


【彼女から解放された。正直、あの能天気にはうんざりだった。】

それだけの短い文面が残されていた。
この事実を、彼女はきっと知らない。
知るはずもないし、知ってほしくもない。

そう思っていたのに、彼女はどこまでも聡かった。

「何か隠してる?」

「どうして…」

何も言っていないからわからないと思ったのに。

彼女はどこまでも無邪気に笑った。
拙い強がりだった。


「だって、あなたとあたしは似てるから」


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