愛してるさえ、下手だった
言うべきか、言わないべきか。
けれどはぐらかしても満希はきっとしがみついてくる。
真実を知るためだけに。
「あいつと別れて、正解だったと思う」
「…どうして?」
「あの能天気にはうんざりだった。
…そう、メールに書いてあった」
本当なら教えたくなかった。
満希をこれ以上傷つけたくなかった。
ただでさえ彼女は、こんなにも細くて頼りない線の上に存在しているような人なのに。
「旭。あたしね…、ずっと、彼の傷を庇ってきたの」
満希が俺の服の裾を引っ張りながら、真剣な目つきで語る。
今にも折れてしまいそうな彼女。
そんな彼女と似ている俺。
俺たちはあまりにも自分をごまかしすぎた。
そうしなければ生きていけなかった。