愛してるさえ、下手だった
旭:未知への扉。
両手を広げて自分の死を受け入れた彼女を、俺は身動きひとつとらずに見つめていた。
今まで俺が手にかけてきた奴はみんな、誇りも信用も捨てて助けを求めてきた。
自分だけは助けてくれと、泣いて頼みこんだ。
それとは違う彼女の態度に驚きを覚えた、もちろんそれもあるだろう。
だけどたった少しの会話でわかってしまったんだ。
似ている。
俺と彼女は似ている。
体の節々が彼女のそれと共鳴して、俺の脳に親近感を訴えた。
誰だって殺す覚悟はできていたはずだったのに、
「…やめた」
気づけばそんな言葉が口からこぼれた。
「もうちょっと抵抗してみようぜ。せめて、あんたが死んで困る人ができるまでは」
そうして俺に見せてくれ。
足掻くことが無駄ではないこと。
運命に逆らうことだって、できるということ。