愛してるさえ、下手だった
満希:愛したのは…。
「バカ…」
扉の閉まった音と共に小さく声が漏れる。
布団にくるまりながら、あたしは細く涙を流した。
残ってる。
旭がささやく甘い響きも、旭が触れた唇の感触も、全部。
起きていて、それでも寝たふりをした。
あなたを困らせたくなかったと言ったら、あなたは笑うだろうか。
帰って来てくれるんだよね?
あたしをまた独りにはしないよね?
大声で泣き喚いてしまいたかった。
そうできたらどれだけ楽になれるだろう。
でも旭があんなに苦しんでいるのに、あたしだけ楽になることなんてできない。
独りになりたくないよ。
そう思ったあたしは、ベッドから体を起こす。
待ってるだけは嫌だった。