愛してるさえ、下手だった
乾いて湿った発砲音。
痛すぎて苦しすぎて、どこに何が当たったのかもわからない。
きっとあたしの体が現実を受け入れたくないのだろう。
「満希……?」
呆然としたような旭の声。
そんな声、初めて聞いた。
泣いてた時だって、旭はそんなに情けない顔はしてなかったよ。
肩口から血が溢れだして、服を赤黒く濡らす。
そうなってようやくあたしは、弾丸が肩に当たったことを理解した。
「ま…、満希っ!!」
旭が一拍遅れて事態を把握したのか、あたしに駆け寄ってくる。
見上げたボスらしき人物は、どこまでも冷酷だった。
こんなに恐ろしい笑顔、見たことない。
「旭。そんなにお前がこいつを殺せないというのなら、俺が殺してやろう」
そうして銃を地面に投げ捨てたかと思うと、今度は服の下からナイフを取り出す。
どことなく血の匂いがするそのナイフは、これまで彼がどれだけ人を殺してきたのかあたしに知らせてくれた。
視界が霞むのは恐怖のせいか、流れる血液のせいか。
そんなあたしを、旭が庇うように抱きしめる。
「やめろ、刹那!満希だけは、殺すな…!!」
泣きそうなぐらいうれしかった。
一瞬でも疑ったりしてごめんね。
あなたはこんなにも、あたしのことを大切に想ってくれていたのに。