愛してるさえ、下手だった
殺し屋の俺に、友達のように接する彼女。
「ね、旭って呼んでいい?素敵な名前だね」
好きでもないし嫌いでもない。
特別な感情を何も抱くことなく、今までこの名前を背負ってきた。
髪の色だって名前を意識したんじゃなくてもとからこうだったし、そんな風に言われたこともなかった。
「勝手にすれば」
次々押し寄せる混乱と動揺に、それだけ言うのが精いっぱいだった。
だって、自分の名前も忘れそうなほど呼ばれていなかったんだ。
自分の命を守ることに必死だったんだ。
なす術も無く、俺に殺されていった人たちのように。