愛してるさえ、下手だった





――「次はこいつを殺せってか」


薄っぺらい紙切れ1枚。
そのたった1枚に、依頼遂行のための最小限の情報が載っている。

名前、性別、顔写真、住所。


さっき依頼を終えてきたばかりだというのに、報告に行った途端次の仕事を押し付けられた。

「お前ならすぐできるだろう」


俺に仕事を押し付けた張本人が笑う。
その笑みはどこまでも暗く冷たく、恐ろしかった。
一体いつになったら俺は彼の圧力に耐えられるだろう、逆らえるだろう。

「…そう、だな」


――いいや、俺はきっと永遠にこの人には刃向かえない。

「期限は一カ月だ。できるな?777」

縁起がいいんだか悪いんだかわからないコードネームももう聞き飽きた。
全部全部、くだらない。


「決まってるだろ、刹那」

その名の通り一瞬で人を殺せる彼への不満なんて、あってないようなものだった。
それを表に出した瞬間、自分の未来は目に見えている。



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