ミス・チョコ
1.ミス・チョコ


「お前ふざけんな!」



固まって動かなかった体がびくっと反応した。
その距離10センチ先の高木くんの顔越しに怒った翔くんが見える。



「はぁ?お前が行けっていったんじゃん。」
「言ったけど…キスまでは言ってない」



二人が言い合いを始める横でただ唖然とその光景を見てた。





『ねぇ付き合ってよ』


そう言われて始まった私達の関係はいつも私ばかりが必死だったっけ。

校内屈指のモテ彼とただの私。
明らかにアンバランス。不自然。そんなの噂されなくても自分が一番わかってる。
でも好きだったから女慣れしてる余裕の翔くんに合わせようといつも必死だった。



そうして頑張って頑張って迎えた今日のバレンタイン。

"明日くれる?"

そんな言葉を信じた私がばかだったなって今更後悔しても遅い。
からかわれるために作った可哀想なハートのチョコが虚しく右手で主張してる。
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