恋の教習所
教卓の前に立っている谷川教官はさっきとちょっとだけ違う。

いつもの学科バージョンの谷川教官。

楽しくわかりやすく進めていく谷川教官。


でも、すこーーーしだけ。
ほんのすこーーーしだけ。

いつもよりテンションが高い気がする。


・・・・・それは、この後の事が楽しみだから?


なんて都合のいい解釈を1人でしてしまう私。


「この時間は・・・交差点と踏切の話ね。実車でも使う話だからよく覚えておいて。もちろん学科のテストなんかでは出やすい問題だからね!」

谷川教官が言うと教習生は頷いている。

信頼されてるんだろうな。


「じゃあまずは左折のやり方から~。もう車で左折してる人いる?」

なんて聞けば・・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。


あれ??


手が上がらない。


けど私には見覚えのある教習生がいた。

女の子で。

私が教養で運転をしている時に確かに交差点右左折をしていた女の子。

この前の学科で“ゆめ”と呼ばれていた女の子。


おかしいな??


ふとその子を見ると。

前回は友達を一緒にいたのに、今回は1人。

1人だと大人しくなってしまうのかな。


「おかしいな~。誰もほんとにいないのか?僕が言ったから無視してるのか?さぁどっち??」

谷川教官は原簿の実車のページを見ながら発言した。

それを見てしまうと、教習の段階がわかってしまう。

という事は当然交差点を練習している子もわかってしまう。


それでも相変わらずシーンとしている教室。

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