恋の教習所
「はいっ!オレスルー。オレの言葉は届かないー。」

なんていつものようにおどける谷川教官。

それを聞くと一部の教習生からくすくすと笑いが起こる。


「おいおい~、笑ってるって事は聞こえてるじゃん!」

速攻でつっこむ谷川教官。


「はいはい。1人で喋ってるオレが寂しくなって来たから、次行きます。」

本当に1人で喋って、そのままホワイトボードの絵も消して行く。

手元の教本も次のページへ。

それを見た教習生はつられてページをめくる。

谷川教官の次の発言を待って、そっちを向いていたから分かるんだ。


寝たり下を向いたりしていない証拠。



谷川教官はこんな学科をよくやる。

みんなを楽しませながら、飽きさせないようにしながら進めて行く。

私が教習生の時から考えると、もっとパワーアップしている。


凄いと正直に思う。


だから・・・余計に憧れたのもあるんだ。


私もくすくす笑いながらページをめくる。



いつか私も教官になった時、こんな風な授業が出来るようになりたいな。



いつか私も・・・谷川教官みたいになりたいな。



少しずつ近づいてくる指導員の試験。

1回で合格できるように。


目の前で立ち振る舞いをしている憧れの人と同じ場所に立てるように。


今できる事を頑張ろう。

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