恋の教習所
質問してくる谷川教官に

「警察も考えました。でも、捕まえる側じゃなくて危なくない運転する人を育てたいなって。それが事故もしないし、捕まらない運転に繋がるんじゃないかって考えたんです。」

こう答えた。
そうしたら谷川教官はうんうんとうなずいてくれて

「なるほどね。こっちとしては事故を起こす人が減る、相手としたら事故もしないし、捕まらない。どっちにとっても良い事だもんな。」

わかってくれた。

「はい。だって私みたいな思いをする人が増えるのは嫌だから・・・。」



谷川教官がハッとして私を見た。


「そうか、そうだったね。」

 
教習生の時、学科の時間だったかな。

谷川教官には話したことがあった。



昔の―――――



小さい頃の私の話。




「頑張って!!いい指導員になりなよ。」
谷川教官が励ましてくれた。


いつ見てもその笑顔、元気になれる。


「はい。ありがとうございます。」


こう私も返事はした。




けど・・・・




喉の奥に残したままの、私の言葉。



“谷川教官みたいな教官になりたいです。”



 
この言葉は、まだ私の口からは出てこなかった。


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