恋の教習所
なんだか後ろから見ていていつもと雰囲気が違う。

そんな気がする。

教習生の頭の上に音符が飛んでいるような。

そんな気がする。


「ここまでで何か質問ありますか?」

教本から顔を上げた山本教官。

いつもは運転の教養で横顔をよく見ているけれど、この時間は正面。


鼻高いよね。

そう言えばタバコ吸うよね。

髪の毛は・・・・・30代だっけ?・・・大丈夫かな?


なんてさりげなく失礼な事を考えていたら・・・

「一ノ瀬さん何か質問ありますか?」


!!
ほら来た!!

他の事考えているのがバレたかな?


「今のところまでは大丈夫です!」

本当に。

大丈夫なんです。

「まぁそうかもね。学科頑張ってるみたいだから。」

山本教官はあっさりとしたもんだ。


ただ、このあっさりの後には・・・

「その調子で運転も頼むよ?」


また来た。

あっさりの後にはさりげなくトドメを刺される。


「はい、頑張ります!」

私はうなずきながら返事を返した。

全く持ってその通りだから言い返す事も出来ない。

特に今日の学科は予習に力が入っていた。


谷川教官は何気に答えの厳しい質問もしてくるから。
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