恋の教習所
「教官凄い!車の話と結びつけたー。」

先ほどゆめと呼ばれた女の子も気づいたようだ。

「こうやって何かに結びつけたら印象に残るでしょ?特にこの話のスタートが僕の頭の話からだからね。教習中、僕を見たら忘れないんじゃない?」

そこまで・・・考えていたんだ。

確かに忘れなさそうだ。

「後ろで聞いてる二人もこんな方法もあるんじゃないかな?これも教習の道の一つだと思うよ。」

私たちにまで!

私たちの教養にまで結びつけてくるなんて。


もちろん私はペンを動かしてメモを取った。

隣でも動く気配がしているから、笠井君も同じだろう。

色んなやり方で教習生に伝えていく。

覚えてもらっていくんだ。


キーンコーン カーンコーン


「はい、じゃあこの時間はこれで終わります。みんな当てないからって油断して寝る人いなかったね!お疲れ様でした。後ろの二人も当てた質問ちゃんと答えたね!お疲れ様でした。」

チャイムが鳴った後、教習原簿にハンコを押しながら山本教官が声をかけた。

最後のフォローまでちゃんとするんだ。

「教官の学科もおもしろかった!そりゃ寝る暇ないし!」

苦田君は教習原簿を取りに前まで出て行った。

「それはありがとう。普段あまり学科しないからね、どうなるかと思ったよ。」

なんて笑いながら苦田君の教習原簿を探し出して渡してあげている。

「私もおもしろかったー!あと二人の教官も頑張ってね。山本教官のような教官になってねー。」

ゆめも友達と前まで教習原簿を取りに出てきた。

それにつられてなのか、みんな取りに行く。


こんな光景初めて見た。

谷川教官はミッション車とオートマチック車に分けて机に教習原簿を置く。

他の教官も似たような感じで。

教習生自ら教習原簿をもらいに教官の所に行くなんて。

さらに見習いの私たちにまで声がかかる。

滅多にない事ばかりが続いた。


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