恋の教習所
私たちは基本的に毎日が教養。

運転になってくるとまだ教官が一緒に乗って“教官としての運転”を練習しないといけない。
だから山本教官の時間も必要になってくる。

配車でちゃんと山本教官の時間を取ってくれている。

ただ、その山本教官が講習や教習に行く時は私たちは空いてしまう。

その時間は学科を聞きに入ったり、事務所で勉強したり。

たまにだが、営業の人がチラシを折って欲しいと言ってきた時は営業用のチラシ折りをしたり。

こうやって一日を過ごしている。


これからの時間も山本教官が他の仕事に行ってしまうから、私たちは自分たちで勉強だ。

学科の復習、指導要領と言った教本の暗記、道路交通法や教習所の決まり事などの法律関係・・・は山本教官が一緒にやろうって言ってたから、後回し。

もはやたくさんありすぎるとどれに手をつけていいのか分からなくなってくる。


あー、他にも論文もあるからそっちの勉強しようかな。


なんて考えていると・・・

「二人は次の時間って山本君との教養は入ってる?」

近寄って来た人に聞かれた。

この人はうちの教習所の所長。

教習所と言う会社を経営している社長とはまた別で。

社長は市内の本社の方にいる。

指導員との直接やりとりをしたり、警察や免許センターとやりとりをしたり、社長からの経営方針を言われたら営業に指示をしたり。

教習所内の一番上、といった感じだろうか。

「いえ、入っていないのでここで勉強しようと思っていました。」

笠井君が答える。

「そうか。勉強しようと思っている所悪いんだが、少し手伝ってもらえるかな?」

どうもうちの所長も元々は教官だったらしい。

だから私たちの勉強が大変だという事も分かってくれていて、なるべく山本教官の時間を空けるように指示をしてくれたりしている。

そんな所長のお手伝いとはなんだろうか。

「はい。」

笠井君も

「わかりました。」

私も返事をする。


「明日・・・。」

所長は説明を始めた。
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