恋の教習所
「お待たせ。」

私は雑巾二枚を持って笠井君の元へ戻った。

「じゃあ拭こうか。」

そう言って笠井君は私の持って来た雑巾を取って机を拭き始めた。

私ももう一つの机を拭く。


「ねぇ、笠井君は所長が言ってた小川さんって知ってるの?」

「知らないなぁ。僕がここで免許を取った時もいなかったし。」

私たちは机を拭きながら話をしていた。

どんな人なんだろう?

なんだか谷川教官といい、山本教官といい・・・そして私を運転できるように育ててくれた湯浅教官といいみんな凄い人たちばかりだから。

きっと凄い人なんだろうな。

なんとなくだけどそんな気がした。


しっかり机も拭けたし。

後はこの机を2階の事務所まで持っておりるだけ。

「階段とエレベーター、どっちにしよう?」

私はエレベーターに入るのかも分からず聞いてみた。

「たぶんこの机は所長サイズの机じゃないから、エレベーターに入ると思うよ。」

笠井君がそういうなら。

エレベーターに乗るんだろう。

出来れば入って欲しいと思う。

「エレベーターまで運んでいこうか。」

そう言われて私は自分が持っていた雑巾をもう一つの机に置く。

同じように笠井君も雑巾を置いて。

「よいしょっ!」

机を持ち上げた。

「大丈夫?一ノ瀬さん。」

笠井君の声に

「うん、大丈夫。」

私は返事をする。

・・・・・何気に力持ちだったりする私。

言わなきゃ分からないから内緒だったりする。


笠井君は自分が後ろ向きで、私が前を見て運べるようにしてくれた。

優しいな、笠井君。



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