恋の教習所
タタタッと少し小走りで。
先に行ってしまった湯浅教官を追いかけて。

「湯浅教ー官。」

私はそう言って喫煙室へ入っていった。

室内は二人。

「おーう。三咲か。」

湯浅教官はたまに私の事を下の名前で呼ぶ。
まるで娘のように。

それが私は嬉しかった。

そのまま私は湯浅教官が座っている隣へと腰を下ろす。


あと一人。


谷川教官ではない。
きっとまだ来ていないんだ。

山本教官ではない。
今日は休みだって言っていた。

所長でもなければ笠井君でもない。


見た事ない人。


でも、同じ制服を着ている人。


誰だろ??


「おはようございます。」

知らない人ではあるが、挨拶をする。

「おはよう。」

その人は返事をしてくれた。


背は・・・座っているから何とも言えないが高い方ではないと思う。

髪は前髪を分けて固めていて、いわゆる七三分けっていうのかな。

谷川教官や山本教官よりは年が上だろうな。

落ち着いていて、穏やかで優しそうな雰囲気。

ネクタイとワイシャツは自由なうちの教習所。
青系のネクタイと白地にしましまのワイシャツ。

湯浅教官と親しそうに話をしているその人。

ネクタイの方まで見ていたから、そのまま胸元のポケットに付けている名札に目がいった。


“小 川”

そう書かれていた。


この人だ!
机を取りに来た人だ!
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