恋の教習所
一時間の学科を聞き終えて、事務所へ戻る私。
今日は笠井君がいなくて1人だった。

谷川教官の学科を聞いてきた。
それも・・・この前聞いた信号の話。

復習という形で。


事務所へ戻ったら、一時間前までいた小川さんの姿はもうなかった。

コーヒーを出されたのだろう。

応接セットの机の上にコーヒーだけが残されていた。


「おはようございます。」

「おはよう。」

たった1回の会話。

後から知った話、小川さんは姉妹校の職員の中で一番うちの教習所に近いんだって。

だから朝仕事へ出勤する前にうちに来て机を持って帰ったんだ。


そんな小川さんと私が再び再会するのはまだまだ先の話。


「笠井君、お疲れ様。」

席へ戻ると笠井君はまたコーラを飲んでいた。

好きだな、コーラ。

きっとまた所長が労をねぎらって買ってくれたんだろう。

「トラックに積むのが大変だったよ。一ノ瀬さんがいないから。」

「ごめんね!!」

内心、私が結構力があるのバレてるのかと焦った。

「なんかあの人が言うには、あっちの学校にも同じ見習いの人がいるらしいよ。それも女の子で!」

笠井君が教えてくれた。

「そうなんだー。今日ついて来れば会えたのにね?」

普段から雑用もしている私たち。

その彼女も来れば会えただろうに。

話が出来たのにな。

まさか小川さんが家から直接うちの教習所に来ていたなんて知らない私はそう思った。

「今度来るらしいよ。」

だからそんな笠井君情報に

「ほんと?!」

私は食い付いた。

「うん。向こうは1人だから仲良くなれるように、ってことらしい。」

「そっかぁ。楽しみだね。情報交換出来るね!」

「そうだね。それまでにこっちも負けないように勉強しとこう。」

お互いに目指す物は同じ。
最終的に同じ試験を受ける事になるんだ。

頑張って合格しなきゃ!


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