恋の教習所
その後私たちは山本教官がいないから、事務所で勉強をしたり学科を聞きに入ったりしていた。

山本教官の休みが増える前に出来るだけの事をしておこうと思って。


ご飯も食べ終わったお昼休憩。

相変わらず私は湯浅教官にくっついて、喫煙室に入っていた。

本当は自分の体にはよくないから、わざわざ入る事はないんだけど。

そう言えば朝、ここで初対面の人と話したなぁなんて思いながら。


ガチャッ


喫煙室の扉が開いて谷川教官が入って来た。

この時間に入って来れると言うことは・・・。

「谷川教官、今日は入校ないんですか?」

普段はこの時間に入校式をしている。

だからお昼休みには中々会えない。

当然お昼ご飯も一緒には食べられないんだ。

「いや、あったよ。けど、今日の人は普通車の免許持ってるしうちの卒業生でまだ適性検査のデータも使えるし。もう終わったよ。」

タバコに火を付けながら答える谷川教官。

そしてそのまま座った席は・・・・・・。
朝、初対面の人が座っていた席。

そこに背の高い谷川教官が座るもんだから、余計に体格とかが違うのが分かる。

常に谷川教官を基準にして考える私もどうかと思うけど。

「じゃあ今日は入校1人だけだったんですね?」

「そうそう。あ、湯浅教官、その人二輪で入校するんでまたよろしくお願いしますよ。」

普通自動二輪車希望で1人だけの入校だったらしい。

学科も二段階までは受けなくてもいいし。

当然テストもない。

「おいおい、わしはもう二輪は引退でいいぞ。その子は今日乗る予定か?」

「引退なんてそんな。まだまだ二輪も現役でいけるでしょう。今日は予定があるとかで帰りましたけど。」

「年寄りをそんなにこき使うな。」

なんてやりとりを2人がしている。

それを聞いているのも楽しい。

それに・・・。


ここに来ると谷川教官と話が出来るチャンスが増える。

そうでないとわざわざタバコの煙がいっぱいの所に乗り込んだりしない。
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